エンパワーメント(empowerment)

エンパワーメントとは、立場の弱い人が主体的に社会と関われるように力をつけ、自分自身の生活や環境をコントロールできるように支援することを意味します。もともと「エンパワー(empower)」という言葉には「能力や権限を与える」という意味があります。エンパワーメントが概念として普及したのは、20世紀にアメリカで起こった、先住民族や女性、マイノリティーの自立を促す活動の中でのことでした。

SDGsにおける17の目標全てにおいて、女性は重要な役割を担う存在と考えられています。そのため、SDGsでは女性をエンパワーすることが課題とされてきました。世界を見渡せば、女性は差別や暴力を受けたり、教育の機会が与えられなかったりするなどして、男性より下の存在とみなされている場面が多々あります。女性へのエンパワーメントは、人々が平等に権利を享受し、主体的な生活を送り、自己実現するために欠かせない考え方です。

注目される理由

今もなお、世界では早すぎる結婚や人身売買、無報酬の労働を強いられるなどして、女性が権利や自由を奪われたり、命を脅かされたりしています。女性という理由で教育の機会や仕事のチャンスが与えられないこともあります。紛争地域では性暴力被害に遭うなど、女性の立場はより脆弱です。

日本では、命に危険が及ぶことはないものの、男女格差が大きく社会的な課題となっています。世界経済フォーラム(WEF)が2022年7月に発表した「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は146カ国中116位で、先進国の中では最下位でした。このような格差をなくすため、2016年、日本政府は「女性活躍推進法」を施行しました。この法律は2019年に改正され、労働者の性別による賃金格差をなくしたり、女性に昇進の機会を与えたりするなど、社会全体で女性の活躍を後押しし、エンパワーする動きが加速しています。

 

所得の少ない人などに少額を貸し付け、そのお金を元手に経済活動を行う「マイクロファイナンス」と呼ばれる仕組みがあります。バングラデシュのムハマド・ユヌス氏率いるグラミン銀行が実施し、女性らをエンパワーして生活力をつける手段として広がりました。ユヌス氏はこの活動により、ノーベル平和賞を2006年に受賞しています。

日本にも、グラミン銀行のモデルを参考にした、女性を支援する「グラミン日本」があります。一般社団法人として2018年に誕生し、シングルマザーや非正規雇用の女性を対象にマイクロファイナンス事業を展開しています。単にお金を貸すだけではなく、自立への一歩を踏み出す機会として、エンパワーメントしています。

参考

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