【観光学×SDGs】「推し活」でジェンダー平等を実現

流通経済大学 社会学部

幸田 麻里子教授

こうだ まりこ|千葉県出身。立教大学大学院観光学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。博士(観光学)。自身も「推し活」を楽しみ、ときには海外遠征もしている。

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2023.03.31update

アイドルのコンサート、アニメの聖地巡礼…自分の「好き」がSDGsに結びつく?観光学を専門とする流通経済大学社会学部の幸田麻里子先生にお話を聞きました。

アイドルと観光、意外な結びつき

私の専門とする観光学は、旅行はもちろん、人の移動が地域に与える文化的・経済的効果や、観光が与える人への影響などを研究する学問で、裾野がとても広いのが特徴。観光は時間やお金、意欲など条件が満たされてようやく成り立つ現象だからでしょう。

その中でも主に研究しているのが「ファンツーリズム」。研究対象は男性アイドルグループの女性ファンで、コンサートやイベントに伴って発生する移動とその効果について研究しています。いわゆる「推し活」で地方のコンサートに行ったとき、その土地の名所・名店も訪れることがあるでしょう。ファンの「好き」という気持ちが、人々を移動させ、地方を活性化させることもあるのです。

「推し」に会いにいくことが地方活性化につながる。ファンツーリズムでSDGsについて学ぼう。

観光学はSDGs的な観点からも研究することができます。例えばジェンダー問題。約30年前、20代女性の高い海外旅行志向は〝今のうち意識〞のためだと考えられていました。「結婚する前に」「子どもが生まれる前に」、つまり自分が自由なうちに好きなことをしよう、という気持ちが旅行へ向かわせるのでは?と考えられていたのです。残念なことに、現在もその傾向は見られます。

その一方、「ファンツーリズム」のように、観光は女性自身を変える力も持ちます。自分の「推し」に会うために、時間の融通が利くように新たな仕事を始める人や、健康やからだに気を遣うようになった人など、その人自身が強い意志を持って生き方を選ぶ姿を多く見てきました。この観光のあり方は、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の手掛かりになるように感じています。

自然保護や、環境への負荷を減らそうと心掛け、今までの観光のあり方を見直そうという「サステナブルツーリズム」も目標11「住み続けられるまちづくりを」につながっています。目標10「人や国の不平等をなくそう」という観点で、経済格差による観光における南北問題について考えることもできるでしょう。

自分で行動を選べる社会になるように

観光学は決して狭い分野ではなく、SDGsをはじめ、幅広い分野で活かせる学問です。私は女性であり、娘を持つ母親としても、ジェンダーや生まれた国、環境にとらわれず、誰もが自分の考えで行動を選択できる社会の実現を望んでいます。

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