環境について考えることが、社会や経済、ジェンダーの問題まで改善する?環境政治学を専門とする法学部の尾内隆之先生にお話を聞きました。
環境を論じる際は地域ごとの視点を大事に
環境政治学とは、環境の変化に応じ、未来を見据え、どのような政策を講じていくべきかを考える学問です。私がその重要性を認識し、本格的に研究を始めたのは、1995年に起きた高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故がきっかけでした。以来、エネルギー政策を中心に、地球温暖化対策のあり方などを研究しています。
SDGsでいえば、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や、目標13「気候変動に具体的な対策を」に関わりますが、環境というトピックはとてもダイナミックな広がりを持つ分野です。そもそもSDGsの元となった「持続可能な開発」は、地球環境の保全をベースとして経済発展との両立を目指すものでしたが、そこに教育やジェンダーに関する目標も加わり、現在のSDGsが出来上がりました。
つまり環境問題は、経済格差やそれに伴う働き方、賃金の問題のほか、ジェンダー平等などの社会のさまざまな課題と結びついていて、私たちはおのずと、そうした幅広い課題にもアプローチすることになるのです。
私のゼミでは、さまざまな環境問題についてディスカッションを繰り広げています。最近は、世界各地の先進的なエネルギー利用について、実例を検討しながら話し合いました。例えば、ヨーロッパ・アルプスの小さな村のケース。そこでは古くからの手段である「薪」によって村全体の暖房や給湯をまかなう一方、最新鋭のコンピューターシステムで、その供給を効率的に管理しています。そこで、日本ならばこのシステムをどこまで参考にできるか、どのようにアレンジすれば導入できるかと議論しました。忘れてはならないのが、地域ごとの視点です。海外の手法を取り入れる場合は、日本の地域の自然や気候、生活スタイルなど、多様な条件に照らして考えることが重要です。
文系でも大丈夫 問題意識を語り合おう
ところで、「環境」というと理系の分野と思われがちです。尻込みする人も多そうですが、文系でも大丈夫。研究者でも「わからないことは専門家の仲間と一緒に考える」というのが今のスタイルです。高校生のみなさんにも、環境問題に関して気になっていることをぜひ声に出して、友だちや家族と共有してもらいたいと思います。みなさんの声の一つひとつが、課題解決の第一歩になると信じています。