交通手段を選ぶことでSDGsの達成に貢献できる?交通経済学を専門とする経済学部の眞中今日子先生にお話を聞きました。
交通手段の選択から環境を考える
交通経済学は、交通産業の諸問題を経済学の視点で深く考察し、解決策を探る学問です。私は現在、交通安全や交通ネットワークの維持について研究しています。また近年は、SDGsの観点から交通のあり方を見つめ直す機会が増えています。
航空業界では、化石燃料から持続可能な航空燃料(SAF)へ転換することによって、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減を図っています。また、飛行機の機体形状・部材を変更することによって燃費向上を図るなど、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」への貢献を目指しています。
人だけではなく、モノを運ぶ手段も見直しが進んでいます。トラックなどの自動車で行われている貨物輸送は、船舶や鉄道と比べて環境負荷が大きい。そのため、地球にやさしく輸送することを目指し自動車からより環境負荷の小さい船舶や鉄道へ輸送手段を転換する「モーダルシフト」が世界的に浸透しています。
話が大きすぎるかもしれませんが、実は私たちも、交通手段を選ぶことで二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を減らすことができます。
例えば、自家用車での移動をバスや鉄道に替えてみる。もちろん、一人ができることには限度があるし、影響も小さいかもしれない。それでも、積み重ねていくことが大きな成果につながっていくと信じています。
交通は持続可能な社会を支える
公共交通機関を利用することは、温室効果ガスの排出削減以外に、SDGsが掲げる基本理念「誰一人取り残さない」への貢献にもつながります。全国各地で地域の人々の暮らしを支えているバスや鉄道も、利用者が減って廃線になるケースが増えてきました。交通手段が減ることで、地域が衰え、そこで暮らす人が取り残されるかもしれない。高齢者など自身で交通手段を持たない方々は、大変な思いをしています。
日本は、地域活性化を大きな課題としてあげていますが、それを支える交通がなければ、目標11「住み続けられるまちづくりを」を実現できません。つまり、交通網を維持することは地域の人たちの暮らしを守ることにもつながるのです。
普段の生活では、交通は「あって当たり前」。でも、その当たり前がSDGsにつながると気づき、行動を変えることで、未来も変えていけるでしょう。