使われなくなった「おもちゃ」がアートに変身!流通経済大学と地域を結ぶ「トーイ&アート」

2023.04.21update

子どもたちが色とりどりのプラスチックのパーツを手に取り、アクリル板に貼りつけたり、瓶に詰めたりして、新しいアートをつくり上げる――。これは、流通経済大学の新松戸キャンパスで2021年からスタートした新しい試み、「トーイ&アート」の一コマ。使われなくなったおもちゃを“アート”に変えることで、環境への負荷を減らすとともに、地域に開かれたキャンパスづくりを進める流経大の取り組みを紹介する。

キャンパスの理念と合致した「トーイ&アート」とは

本来であれば廃棄されるはずのものを、別の用途に再生していく取り組みは「アップサイクル(創造的再利用)」と呼ばれており、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」を達成するための方法の一つでもある。それを、おもちゃで実践したのが、「トーイ&アート」だ。もともと、おもちゃは服や家電、家具などと異なり、リサイクル品として回収する自治体は多くない。「リサイクルが難しいだけでなく、子どもにとっておもちゃは思い出の品なので捨てること自体が難しい。何かいい活用方法がないだろうかと考えている中で生まれたアイデアでした」と話すのは、トーイ&アートのプロジェクトを立ち上げた、法学部教授の尹敬勲先生だ。

流通経済大学新松戸キャンパスは、学生にとって居心地がいいと思える空間づくりと、地域住民に親しみを持ってもらえる存在を目指し、学内をアートで彩る「アート化プロジェクト」を進めている。「トーイ&アート」の取り組みは、このプロジェクトの理念にも寄り添ったものだった。「キャンパス周辺には子育て世帯も多い。この素晴らしいプロジェクトを、たくさんの人たちに知ってもらい、喜んでもらうにはどうすればいいんだろう?」。尹先生とともに、このプロジェクトに携わり、流経大の理事を務める髙橋伸子先生は考えた。

ワークショップを重ねて、手ごたえを実感

まずは実際に体験者の反応を見てみたいと、子どもを育てる教職員に呼びかけ、学内での実験的なワークショップに親子で参加してもらうことにした。そこで目にしたのは、子どもたちが生き生きとおもちゃを選び、創作に没頭する様子だった。髙橋先生と尹先生はここでいろいろなヒントを得て、徐々に「トーイ&アート」の活動を広げていった。

教職員が親子で参加したワークショップの様子。アクリル板におもちゃを貼りつけて、思い思いの作品をつくり上げた。
ウクライナ国旗色のおもちゃのパーツを集め、「NO WAR」のメッセージを込めた。

2022年6月に実施された新松戸キャンパスの学園祭「青春祭」では学生を対象に、そして同年7月に大学が主催したイベント「海の日アートフェス」では地域の親子を対象に、それぞれワークショップを開催。ガラス瓶にLEDライトとおもちゃを詰めたランタンづくりに取り組むと、参加者たちは完成作を大切そうに持ち帰った。まさに、おもちゃがアートに生まれ変わり、「創造的再利用」が実現した場面だった。

「海の日アートフェス」でのランタンづくり。

また、新しい発見もあった。「子どもたちが作品づくりに夢中になっている間、親御さんたちがほっと一息ついているのが印象的でした。この取り組みは親御さんたちにゆとりの時間も提供できるのだと気づいたんです」と髙橋先生。尹先生は「子どもたちをはじめとした地域の人々が出入りすることで、キャンパスにエネルギーが生まれることを実感しました」。地域に開かれた大学という目標に対しても、着実に成果が生まれているようだ。

色も形もさまざまなおもちゃから、自分の作品に必要なパーツを真剣に選ぶ子どもたち。新松戸キャンパスのロビーは、かつてない熱気で包まれた。

次なる課題は、学生の参加者を増やすことだ。そこで、髙橋先生は新たな試みに挑戦した。

「2022年11月に龍ケ崎キャンパスで開催した学園祭『つくばね祭』では、サッカー部で使い古したボールやキーパーグローブ、スパイクなどに、おもちゃを組み合わせた『トーイ&アート』に取り組みました。学生や地域の人々が一緒になって、アクリルパネルに『RKU』の大学ロゴを飾りつけた看板をつくりました。これは学生たちも夢中になってやってくれて。個人がそれぞれに作品をつくるだけではなく、こうしてみんなで参加する方向性の取り組みも広げていければと思っています」(髙橋先生)

つくばね祭で完成した「RKU」のロゴ看板。使われなくなったサッカー部のアイテムと、おもちゃが融合している。

使われなくなったおもちゃを使ったSDGsの取り組み「トーイ&アート」は、流通経済大学を舞台に、さらなる広がりを見せていきそうだ。

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