街の人たちの健康と笑顔を支え、新たな地域の担い手を育てる「スローエアロビック教室」

2025.03.31update

エアロビクスというと、激しい動きと音楽に合わせてリズミカルに踊る姿を思い浮かべるだろう。しかし、高齢者や運動習慣のない人でも気軽に楽しめるエアロビクスがある。それが「スローエアロビック」だ。流通経済大学龍ケ崎キャンパスでは、地域の方々を対象にスローエアロビック教室を定期的に開催している。SDGsの「目標3 すべての人に健康と福祉を」そして、「目標11 住み続けられるまちづくりを」の達成に貢献する取り組みを紹介しよう。

元気な声と繊細な目配りが明るく教室を盛り上げる

「みなさん、今日は特に元気そうですね!準備体操から始めましょう!」

明るくハキハキとした声で呼びかけるのは、スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科4年生の沼田凌太さん。スローエアロビック教室のインストラクターを務めている。ゼミの指導教授である諏訪部和也先生に誘われ、この活動に参加するようになったという。

「地域貢献になるのはもちろん、いま目指している教員の仕事にも役立つ経験だと思い、ぜひやらせてくださいと返事をしました」と沼田さん。少しはにかみながら「実はダンスはそんなに得意じゃないんですけどね」と話すものの、参加者の前でお手本を見せる姿は堂々としたもの。「今日はこの曲からいきますよ!まずは腕を動かしていきましょう!」と声を掛けながら、参加者一人ひとりの動きに目配りを欠かさない。進め方がみんなのペースと合っているか、きつそうな人はいないかなど、常に気を配りながら場を盛り上げている。 彼の軽快なトークと明るい音楽に背中を押され、参加している地域の方々も実に楽しそうだ。この教室は市内に住む60歳以上の方を対象に月に1、2回のペースで開催され、毎回30名ほどが集まっている。

明るい笑顔と元気な声でリードする沼田さん。参加者一人ひとりへの目配りも欠かさない

認知機能の維持・向上にも期待!~専門家が推進するエクササイズ

「私の研究では、息が軽く弾む程度の運動を10分間行うだけで、座っている場合に比べて記憶力が向上することがわかっています(諏訪部准教授の研究について)。スローエアロビックは、高齢者の方でも無理のない負荷で運動ができ、身体の健康だけでなく、認知機能の維持・向上にも効果が期待できるエクササイズなのです」。そう話すのは、スポーツ健康科学部の諏訪部和也准教授だ。エアロビック競技のトップ選手として活躍してきた諏訪部先生は、スポーツ神経科学と体操・体つくり運動を専門に教育・研究活動に取り組んでいる。このスローエアロビック教室は、地域貢献であると同時に、より効果的な運動プログラムの効果検証の場でもある。実験やデータの収集に積極的に協力してくれる高齢者も多く、「研究の成果を参加者のみなさんにも還元していきたい」と諏訪部先生は言葉に力を込める。

流通経済大学スポーツ健康科学部の諏訪部和也准教授。研究成果を社会に還元するアウトリーチ活動に力を入れている

健康維持の”3つのS”~地域の新たな交流の場に

ただ、健康に良いからという理由だけでは、運動を続けるのは難しい。そこで諏訪部先生と沼田さんが大切にしているのが「楽しさ」だ。「シンプル・スマイル・ソフトの“3つのS”がスローエアロビックでは大切だと諏訪部先生から教わりました。いつもこの3つを意識しています」と沼田さん。スマイル=笑顔で楽しみながら参加できるようスローエアロビックで使用する曲は、ドラマやCMの音楽や参加者の年代に合わせた懐メロなどからセレクトしている。「ピンク・レディーやABBAの曲はよく流しますね。美空ひばりさんの曲も人気です。おかげで僕も昭和歌謡に詳しくなりました」と沼田さんは笑う。参加者には教室の感想をアンケートで書いてもらうとともに、曲のリクエストも募っていて、沼田さんは諏訪部先生と相談しながら、寄せられたリクエストの中からノリとテンポの良い曲を選曲している。参加者の一人は「ここで新しい知り合いができました。教室が終わった後、一緒に食事やお茶をするのが楽しみで参加しています」と笑顔で話してくれた。教室は、運動を通じて健康を維持するだけでなく、新たな交流を生み出す場ともなっているようだ。

“3つのS”=シンプル・スマイル・ソフトはいつも欠かさない

街の人たちとの交流が新たな地域の担い手を育てる

教室の受付から当日の運営、アンケート結果の集計、そして改善策の立案まで、ほぼすべての運営を諏訪部先生と二人三脚で行っている沼田さん。学業やアルバイトもある中で、この活動に力を注ぐのはなぜなのか。

「教室にいらっしゃる方々の笑顔が何よりの励みになっています。アンケートで『いつもありがとう。次も楽しみにしています』といった言葉をもらうと、『よし、また頑張ろう!』とやる気が湧いてきます」と語る。若者から元気をもらいたいと参加する高齢者の方も多いそうだが、沼田さん自身も参加者から元気をもらっている。

「以前と比べるとずいぶん明るくなったね、と言われると本当に嬉しい。最初は緊張して参加者の方と目も合わせられなかったけれど、今では気軽に世間話ができるようになりました」。アルバイト先の地元スーパーでも、参加者と立ち話をすることがよくあるという。コミュニケーション能力の面でも成長を感じているようだ。 「この教室のおかげで、もっと地域に貢献したいという気持ちが強くなりました」と語る沼田さん。大学卒業と同時に中学校の教員免許を取得し、その後は小学校の教員免許取得のため、通信制大学で勉強に取り組む予定だ。スローエアロビック教室は、地域の高齢者の健康と交流を支えるとともに、沼田さんのような地域の未来を担う若者の成長の場にもなっている。

参加者の方々と談笑する沼田さん。世代を超えた交流は、地域を担う若者の成長にも役立っている

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